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せん妄の原因とは?なぜ発症するか徹底解説します!

せん妄は高齢者の病気というイメージを持つ方も多いでしょう。
しかし、せん妄の原因は老化以外にもたくさん存在します。

本記事では、せん妄の原因について詳しく解説します。

  • せん妄とは何か
  • せん妄の原因は何か
  • せん妄の再発について

ぜひ本記事を最後までお読みください。

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せん妄とは

疑問

せん妄とは、一時的に起こる精神障害です。
せん妄を発症すると、以下のような症状がみられます。

  • 意識障害(ボンヤリしている)
  • 記憶障害(せん妄の間の記憶がない)
  • 見当識障害(時間・場所・人間の認識ができない)
  • 注意力の低下
  • 睡眠障害(昼夜逆転・不眠)
  • 興奮・イライラ
  • 抑うつ・無気力
  • 幻覚・妄想

せん妄は一過性の症状で、数時間~数日で収まるのが一般的です。
稀に、数か月以上持続することもあります。

特に高齢者はせん妄の持続時間が長い傾向があります。

せん妄の症状についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

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せん妄の原因

せん妄の原因は多岐にわたります。
今回は、せん妄の代表的な原因を5つ紹介します。

疾患

せん妄の原因は、何らかの身体疾患であることが多いです。
身体疾患の例は以下の通りです。

  • 腎不全
  • 肝不全
  • 認知症
  • 脳卒中
  • パーキンソン病
  • 脱水症状
  • 熱中症

特に、腎不全や肝不全はしばしばせん妄を伴います。
理由は、代謝の低下により、身体に毒素が溜まりやすくなるからです。

腎不全や肝不全が起こると、老廃物の排出が滞るようになります。
老廃物の例を挙げると、アンモニア、ナトリウム、カルシウムなどです。

体内に老廃物が蓄積すると、血中濃度やホルモンのバランスが崩れ、脳内の神経伝達に支障をきたします。
脳内の情報伝達が滞ると、せん妄の発症リスクが高まります。

また、腎不全や肝不全によって、日常的に服用している薬剤が代謝されなくなるのも、せん妄の原因の一つです。
体内に蓄積した薬剤がやがて脳に到達すると、せん妄を引き起こします。

認知症とせん妄の関係を以下の記事にまとめておりますので、ぜひご覧ください。

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手術

せん妄は、何らかの手術後にあらわれることが多いです。
手術後に発症するせん妄は術後せん妄と呼ばれます。

一口に手術が原因といっても、せん妄を引き起こす要因は多岐にわたります。
手術による心身のストレスが代表的です。

手術中や手術後に使用された薬剤も、せん妄の原因となりえます。
せん妄の原因となる薬剤とは、麻酔薬や鎮痛薬などです。

手術そのものではなく、手術前後の入院がせん妄の原因となることもあります。

特に、病院は人の行き来や機器が多い環境です。
足音やアラーム音が気になり、気が休まらないことも多いでしょう。

些細なストレスや不眠を積み重ねた結果、せん妄に至るケースも見られます。

さらに、手術に伴う禁酒・禁煙なども、せん妄の原因の一つです。
酒やタバコなどの依存性が高いものは、使用を中断するとせん妄を発症することがあります。
いわゆる、禁断症状の一種です。

術後せん妄についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

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薬剤

薬剤の使用・中止は、せん妄の原因となります。
せん妄を引き起こす薬物とは、向精神薬、睡眠薬、治療薬、市販の医薬品などです。

特に、向精神薬はせん妄と深いかかわりがあります。
向精神薬が脳内の神経伝達物質に作用するからです。

向精神薬は、興奮や抑うつといった精神症状の治療に用いられます。
脳内のホルモンバランスを整えることで、気分を安定させる作用があります。

しかし、場合によっては脳内のホルモンバランスをかえって乱してしまいます。
ホルモンバランスが乱れた結果、脳内の情報伝達がスムーズにいかなくなり、せん妄が起こります。

長期的に使用していた薬品の服用を中止した際にも、せん妄はあらわれます。
理由は同じく、服用の中止によってホルモンバランスが乱れることです。
特に、鎮痛薬や鎮静薬は依存性が高いため、しばしばせん妄の原因となります。

薬物とせん妄の関係についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

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アルコール

アルコールの摂取・中止は、せん妄の原因の一つです。
特に、慢性的に大量飲酒している方が、断酒や酒量を減らした場合にせん妄が起こりやすいです。
断酒や酒量の減少によって生じるせん妄は、振戦せん妄あるいはアルコール離脱せん妄と呼ばれます。

症状があらわれるタイミングは、断酒・酒の減量後2~4日目が一般的です。
症状は3~4日で収まりますが、稀に3カ月程度続くこともあります。

振戦せん妄の主な症状は、手足の震えです。
そのほかに、発汗・発熱、嘔吐、興奮、不安、幻覚・妄想などがあらわれます。

このように、アルコールが原因のせん妄は、一般的なせん妄と症状の特徴が少々異なります。
せん妄症状の中でも、特に手足の震えが目立つ場合は、アルコールが原因の可能性が高いです。
アルコール性のせん妄の発症リスクは、飲酒量と飲酒期間に比例します。

環境の変化

せん妄は、住環境の変化に誘発されることが多いです。
具体的に、入院、介護施設への入所、引っ越しなどがあります。

高齢の方や認知症の方は、新しい環境にうまく対応できません。
そのため、入院や引っ越しによって環境が変わると、ストレスが溜まってしまい、せん妄を起こしやすくなります。

特に、ICU(集中治療室)への入院は、せん妄の大きな原因です。
ICUは外部と遮断されるため、脳への刺激が少なくなるからです。

ICUの多くは、窓や時計などがありません。
よって、時計や窓の外の景色から、時間の経過を感じられなくなります。
時間の感覚が失われると、見当識障害が起こり、せん妄の発症リスクが高まります。

あるいは、夜間にも人の出入りがあったり、機器が一晩中音を立てたりして、睡眠が妨げられる点も、せん妄の原因の一つです。
不眠が続くと時間の経過を感じにくくなるため、せん妄のリスクが上昇します。

実際に、ICUに入院している方の約40%がせん妄を経験するというデータがあります。
一般病棟に入院している方でも、約20%~30%にせん妄症状がみられます。

入院によるせん妄は、10日~12日程度で収まりますが、場合によっては数か月持続することもあります。

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せん妄の方の看護

せん妄の方に対する看護では、薬物療法が多いです。
せん妄によって興奮が強くなる時間帯を把握しておき、予防的に向精神薬などを投薬します。

また、せん妄に対する看護では、早期対応が肝心です。
早期発見、早期介入、早期予防を行うことで症状の悪化を食い止めていきます。

そして、せん妄によって見当識能力(場所や時間を把握する能力)が低下することが多いので、日時の説明や時計やカレンダーを設置します。
また、高齢の場合は視力や聴力の低下によって周囲の状況が確認できないことがあるのでメガネや補聴器を使用することもあります。

せん妄の方とのコミュニケーションでは相手の言葉を否定せず、傾聴することが大切になります。
会話のなかで見当識能力の確認や、日時を伝えることが求められます。

せん妄の看護についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

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せん妄は再発する?

一度せん妄を経験した方は、その後もせん妄を繰り返す可能性が高いです。

せん妄の中でも、術後せん妄を経験している方は、特に高い再発リスクがあります。
術後せん妄の原因は、手術による血行の変化、麻酔薬・治療薬の副作用が一般的です。

一度目のせん妄と同じ条件がそろえば、再びせん妄が起きる可能性があります。
特に、癌などの進行性の疾患は、手術や投薬の回数が増えるため、せん妄の再発リスクが高まります。

同じく再発リスクが高いのが、夜間せん妄です。
夜間にせん妄が出た方のうち、約7割がせん妄を再発するというデータもあります。

また、術後せん妄や夜間せん妄以外のせん妄の方でも、再発のリスクは高いです。
理由は、せん妄の原因が脳の働きの低下によるものだからです。

特に高齢の方は、老化によって脳の働きが低下しています。
せん妄が出ている場合は、脳の働きに重大な支障があらわれ始めていると考えられます。
老化を止めることはできないため、年齢を重ねるにつれ、せん妄の再発リスクはますます上昇します。

せん妄の再発を防ぐには、せん妄の原因を特定しなければなりません。
せん妄の原因は、薬の副作用や体調不良であることが多く、原因を取り除けば再発しにくくなります。

体調不良には、脱水や発熱、便秘なども含まれます。
多くの場合、せん妄の方本人は、自分の体調不良を訴えるのが難しいです。
よって、かわりに家族や介護者が入念に健康管理を行う必要があります。

せん妄の原因が脳機能の低下であるならば、脳機能を補うような工夫が必要です。
特に入院時は刺激が減るため、脳の働きが低下してせん妄になりやすいです。

視覚や聴覚に適度な刺激を与えることで、せん妄の再発予防に努めましょう。
具体的には、大きめのカレンダーや時計の設置のほか、ラジオなどの利用がおすすめです。
視力や聴力の補助として、老眼鏡や補聴器も活用しましょう。

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せん妄の原因のまとめ

ここまで、せん妄の原因に関する事柄についてお伝えしてきました。
以下にこの記事でのポイントをおさらいします。

  • せん妄とは一時的に起こる精神障害
  • せん妄の主な原因は、身体疾患、手術、薬、アルコール、環境の変化など
  • せん妄を一度発症すると、繰り返し発症する可能性が高い

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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