血圧を測るときに、高いか低いかを気にする方は多いでしょう。
ところで血圧は、左右差にも注意する必要があることをご存じでしょうか。
なぜ、血圧の左右差に注意しなければならないのでしょうか。
本記事では、血圧の左右の差について以下の点を中心にご紹介します。
- 血圧の左右差が出る理由
- 血圧の左右差で考えられる病気
- 血圧の左右差の対処法
血圧の左右の差について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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血圧の左右の差が起こる理由
血圧の左右差とは、右腕と左腕で血圧が異なる状態を指します。
個人差はありますが、血圧は右の方が左よりもやや高いことが一般的です。
なぜ、左右で血圧の数値に差が出るのでしょうか。
理由は、血管の構造・太さが左右対称ではないためです。
たとえば鎖骨下動脈という血管を例に取りましょう。
鎖骨下動脈は、心臓の太い血管(大動脈)から上腕に分岐する血管です。
鎖骨下動脈は、左側より右側のほうが早く分岐します。
また、健康な方であっても左右の血管の太さには差があることがほとんどです。
そのため、血圧も左右で差が出やすくなるのです。
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血圧の左右の差から考えられる疾患
血圧の左右差が10mmHg以内の場合は、特に問題は無いとされています。
一方、左右で血圧に10mmHg以上の差がある場合は、なんらかの疾患の可能性もあります。
血圧に大きな左右差が出やすい疾患は次の通りです。
動脈硬化症
動脈硬化症は、血圧の左右差の代表的な原因の1つです。
特に鎖骨下動脈に動脈硬化症が起こると、血圧に左右差が出やすくなります。
動脈硬化症とは、血管の壁が分厚くなり、血管が柔軟性を失った状態です。
動脈硬化症による血圧の左右差には、主に2パターンがあります。
1つ目は、血圧が高いほうの血管が動脈硬化を起こしているパターンです。
動脈硬化が起こると、血流によって血管にかかる負荷が大きくなります。
結果として、血圧が上昇しやすくなります。
2つ目は、血圧が低いほうの血管が動脈硬化を起こしているパターンです。
動脈硬化が進行すると、血管が狭窄したり詰まったりすることがあります。
すると血流が著しく低下するため、血圧が下がりやすくなります。
動脈硬化の原因は様々です。
主な原因には、糖尿病・高血圧・肥満・脂質異常症・喫煙などがあります。
特に肥満と脂質異常症は血圧の左右差を引き起こしやすいと指摘されています。
高安動脈炎
高安動脈炎は、大動脈や大動脈から分岐する太い血管に炎症が生じて血管が狭窄・閉塞する病気です。
特に上半身の血管に重大な炎症が生じると、血圧に左右差が出やすくなります。
症状としては、血圧の左右差以外に発熱・手足のだるさ・上半身の痛み・冷や汗などがあります。
高安動脈炎は自己免疫疾患です。
自己免疫疾患とは、免疫機能がなんらかの原因で自身の細胞を攻撃する病気です。
高安動脈炎の原因は分かっていません。
そのため、有効な治療法も確立されていません。
一説では原因として遺伝的要因やストレスなどが指摘されていますが、因果関係は不明です。
高安動脈炎の発症は女性に目立ちます。
好発年齢は20~30代で、10代や40代以上で発症することもあります。
高安動脈炎は原因・治療法が不明のため、国の指定難病に登録されています。
出典:厚生労働省【40高安動脈炎参考資料】
大動脈解離
大動脈解離とは、大動脈の壁が裂ける病気です。
大動脈解離が起こると、裂けた血管からあふれ出した血液が、血管の外などに溜まることがあります。
血管外に溜まった血液が血管を圧迫すると、血管の内部が狭くなったり閉塞したりします。
血管が狭窄・閉塞した際、血流は停滞するため血圧が低くなります。
結果として、血圧に左右差が出るというわけです。
大動脈解離は緊急性の高い病気です。
もし兆候を感じたらすぐに医療機関を受診してください。
血圧の左右差以外の症状は、胸の痛み・けいれん・失神などです。
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血圧の左右の差が大きい場合の対処法
血圧の左右差が大きい場合の対処法をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
医療機関を受診
血圧の左右差が大きい場合は、血管の病気が疑われます。
大動脈解離のように重大な病気の可能性もあるため、放置はせず早めに病院を受診してください。
病院を受診する目安は、血圧の左右差が10mmHg以上の場合です。
20mmHg以上の場合は緊急性が高いため、速やかに医療機関を受診してください。
ちなみに、不整脈の方は血圧の測定が難しい場合もあります。
理由は、脈の乱れによって血圧計がうまく血圧を感知できないためです。
たとえば血圧計にエラー表示が出たり、測れたとしても正確な数値が出たりするケースが代表的です。
場合によっては、誤差によって血圧に大きな左右差が出ることもあります。
いずれにしろ、血圧計の数値が正しいのかどうかはご自身では判断が難しいところです。
血圧の左右差の原因を特定するためにも、大きな差があるときはひとまず病院を受診しましょう。
生活習慣の改善
血圧の左右差の大きな原因は、動脈硬化・糖尿病・肥満などの生活習慣病です。
つまり血圧の左右差を改善するには、生活習慣病の予防・改善に取り組む必要があります。
生活習慣病を予防・改善するためのポイントをご紹介します。
食生活
食生活の乱れは生活習慣病の大きな原因の1つです。
代表的なのは塩分・糖質・脂質の摂りすぎです。
食べ過ぎにも注意が必要です。
カロリーオーバーは肥満につながり、ひいては糖尿病や高血圧・心疾患などのリスクを高めるためです。
生活習慣病を予防するには、様々な栄養素をバランス良く摂ることが大切です。
野菜・果物・海藻には、現代人に不足しがちなビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富なため、積極的に摂りましょう。
お酒・タバコ
生活習慣病予防のためには、アルコール・タバコは控えるのがベストです。
たとえばアルコールの大量飲酒は血圧を上昇させたり、肝硬変を引き起こしたりすることがあります。
タバコに含まれるニコチンは血管を傷つけて動脈硬化・高血圧などのリスクを高めます。
程度な運動
生活習慣病を予防するために、適度な運動を心がけましょう。
おすすめなのは毎日30分以上の有酸素運動です。
有酸素運動には、血管の柔軟性を維持して血流を促進する効果があります。
血流が良くなると血圧の数値の改善が期待できます。
また、有酸素運動には肥満を解消する効果も見込めます。
ウォーキング・水泳・サイクリングなどに取り組んでみると良いでしょう。
適正体重の維持
血圧の左右差を改善するには、体重を適正に保つことも大切です。
肥満は血圧の左右差を生みやすいためです。
適正体重は身長によって変わります。
適正体重の求め方は次の通りです。
適正体重=身長(m)×身長(m)×22
肥満度を調べるにはBMIを求めるのもおすすめです。
BMIの求め方は次の通りです。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)×22
普通体重のBMIは18.5〜25です。
最も理想的なBMIは22とされています。
BMI25以上は肥満に該当します。
BMIが25以上の場合は、血圧の左右差を改善するためにも、体重を落とすよう心がけましょう。
ストレス発散
血圧の左右差を改善するには、ストレスを溜めない・発散することも大切です。
ストレスは血圧の乱れの大きな原因の1つであるためです。
なぜストレスが血圧を乱れさせるのかというと、自律神経と関係があります。
自律神経は心拍・血圧・体温などを管理している神経系です。
自律神経は繊細なため、ストレス・疲労などでバランスを崩すことがあります。
自律神経のバランスが崩れてしまうと、心拍・血圧などのコントロールに支障が出ます。
結果として、血圧に異常が生じることがあります。
ストレスはまず溜めないことが大切です。
もしストレスの原因が分かっているときは、可能な範囲で距離を取りましょう。
たとえば仕事に原因がある場合は、転職・配置換え・仕事量を減らすなどの工夫が必要です。
すでに溜まっているストレスは発散しましょう。
代表的なストレス発散法は、休養・趣味などです。
適度な運動は身体の緊張をほぐして心身をリフレッシュさせてくれます。
血圧の左右の差を測るときのポイント
血圧の左右差は、測り方に問題があるとあらわれることがあります。
つまり本当に左右差があるかどうかを知るには、正確に血圧を測定することが大切です。
ここからは、血圧を正確に測るためのポイントをご紹介します。
同じ時間・条件で測る
血圧を正確に測るには、測定条件を同じにすることが大切です。
血圧は、時間帯および運動状況などによって大きく変動するためです。
具体的なポイントは次の通りです。
- 測定時間を決める:起床後・昼食前・就寝前など
- 姿勢を同じにする:座る・立つ・寝る
- 身体状況を同じにする:運動直後・入浴後・カフェイン摂取後・飲酒後・喫煙後は避ける
連続で測らない
血圧は連続で測らないようにしましょう。
理由は、血圧は連続で測るほど低くなりやすいためです。
場合によっては、実際には左右差がないにもかかわらず一方の血圧が極端に低くなることもあります。
正確な左右差を知るには、測定と測定の間は少し開けることが望ましいです。
具体的な目安は3分です。
たとえば左右で1回ずつ血圧を測ったら、3分以上置いてもう一度左右を測りましょう。
時間を置いても血圧に大きな左右差がある場合は、血管の病気などが疑われます。
家庭での血圧測定状況
血圧は、病気の有無や健康状態を知るための重要な指標です。
日々の健康管理のためにも、血圧は毎日家庭で測定することが望ましいです。
家庭での血圧の測定状況について、厚生労働省調査結果を参照します。
【高血圧の指摘の有無別、家庭で血圧測定をしたことがある者の割合(30歳以上)】
指摘あり(%) | 指摘なし(%) | |
総数 | 72.0 | 33.0 |
30-39歳 | 46.7 | 17.9 |
40-49歳 | 50.8 | 24.2 |
50-59歳 | 71.4 | 34.9 |
60-69歳 | 78.7 | 44.9 |
70歳以上 | 73.4 | 48.8 |
30歳以上かつ家庭で血圧を測定したことがある方は、高血圧の指摘ありで72%でした。
高血圧の指摘をされていない方の測定率は33%です。
高血圧の指摘なしの測定率を年代別に見ると、若い方ほど低くなっています。
一方、若い方でも高血圧を指摘された方の測定率は、指摘なしの方の約2倍にのぼります。
つまり毎日の家庭での血圧測定の意識は、高血圧などの持病があるかないかに左右されていることが分かります。
血圧は、高血圧などの持病がない方でも毎日測るのが理想的です。
日頃の血圧を把握しておくことで、高血圧や心疾患などの病気の早期発見が期待できるためです。
高血圧などは早期に治療すれば、良好な予後を期待できます。
早期発見・早期治療につなげるためにも、日頃から血圧を測ってご自身の健康管理に努めましょう。
なお、血圧は左右両方で測るのがおすすめです。
左右差が大きい場合には血管の病気が疑われるためです。
血管の病気を早期発見するためにも、血圧は左右の腕で測ってみてください。
出典:厚生労働省【平成22年国民健康・栄養調査結果の概要】
血圧の左右の差まとめ
ここまで血圧の左右の差についてお伝えしてきました。
血圧の左右の差の要点を以下にまとめます。
- 血圧の左右差が出る理由は、血管の分岐の仕方・太さが左右で異なるため
- 血圧の左右差で考えられる病気は、動脈硬化・高安動脈炎・大動脈解離など
- 血圧の左右差の対処法は、病院での検査・生活習慣の改善など
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。