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【専門家インタビュー】骨粗鬆症とカテキンを含むお茶を掛け合わせた研究

三重大学 生物資源学研究科 生物圏生命科学専攻 准教授 西尾昌洋

 

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研究内容について

編集部:「ガンビア抽出物の骨粗鬆症に対する影響に関する研究 」についての研究内容と研究成果について教えてください。

西尾様:ガンビアは,阿仙薬という名で生薬として日本では出回っているが,1821年にRungeが発見し,現在まで研究がなされている。阿仙薬は,主に収斂性止瀉薬,口腔清涼剤の原料とされ,(+)-カテキンが主成分で薬効は止瀉薬や整腸薬で広く使われている。

ガンビアの(+)-カテキンを用い,骨粗鬆症の薬効に足すことができるのではないかという見地で研究をおこなった。ガンビアの当研究室での研究は,Pramita女史が当大学院修士課程のテーマとしてインドネシアから持ってきてスタートした。 ガンビアの骨粗鬆症効果は,骨芽前駆細胞から骨芽細胞に有意に増加することを明らかとしたが,実験動物においては効果がなかった。このことは,主成分である(+)-カテキンが骨を増加していることが考えられ,他の成分がその機能を打ち消す結果となった。

編集部:ありがとうございます。前述の研究を行った経緯を教えてください。

西尾様:私達は,緑茶のカテキン類とビタミンKの抗骨粗鬆症効果をこれまでに検討していたので,ガンビア中の(+)-カテキンの抗骨粗鬆症効果を骨芽前駆細胞と破骨前駆細胞と卵巣摘出マウスでの試験を行なった。骨芽前駆細胞が骨芽細胞に変化する際,(+)-カテキンが作用していることを示唆した。しかし,動物モデルでは抗骨粗鬆症作用が見られず,(+)-カテキンの作用を他の成分が阻害している可能性も示唆した。これらのことより ,ガンピアの(+)-カテキンの抗骨粗転 症 効 果 を薬効に加えるためには ,ガンピアの他の成分の解析が必要となり,現在解析を行なっている。

編集部:「伊勢茶の骨粗鬆症に対する影響に関する研究」についての研究内容と研究成果について教えてください。

西尾様:伊勢茶の骨粗症 効果を考える上で,緑茶に多いピタミンKとエピガロカテキンガレート (EGCg)の両者を上げた「抗ロコモ緑茶」を農林水産省の農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業重要施策対応型で三重県農業研究所と共に「かぶせ茶」の開発に成功した。脂溶性ビタミンKを飲用にするためには,熱水抽出では全く出てこないので緑茶粉末化が必要であり,緑茶を食することが必要となる。そこで,緑茶粉末が,試験管内・細胞・動物試験での抗骨粗鬆症効果に対する影響を持っていることを確認した。
しかし,ヒト試験の結果は,男性を使った試験結果であり,血中の骨粗牴症マーカー変動は見られなかったが,血中ビタミンKの増加は有意であった。私のやった研究では,雌性マウスを使ったものであり,つまり,女性に特化した試験が必須となり,現在,試験をするためにそのパートナーを探している。
加えて,カフェインが試験の肝となっているのも明らかとなり,カフェインレス緑茶でのヒト試験における抗骨粗鬆症効果に作用するのかに視点を当てて実施できるように計画している。

編集部:西尾様が考える本研究の意義を教えてください。

西尾様:本研究の意義は,食品に含まれている成分がヒトで薬効を持っているかに焦点を当てて研究を行なっている。
つまり,特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品にあてはまった食品をメインとして考えており,共同研究を随時行なっている。伊勢茶(抗ロコモ緑茶)等の抗骨粗鬆症効果等の研究においても,トクホまたは機能性表示食品の実験計画に則り研究を進めており,非臨床試験と同じ尺度で結果を見ている。
カフェインレスの抗ロコモ緑茶の開発は,カフェインの副作用である睡眠阻害があるため,高年齢者が夕食でも緑茶を飲用(食用)できることを開発目標として重要なことになっている。カフェインレス緑茶の開発では,カフェインを抜く際にEGCgやビタミンKも一緒に抜けてしまうことが問題となり,現在カフェインの抜き方に焦点を当てて研究している。カフェインレス抗ロコモ緑茶の開発で,夜にも飲食できる緑茶にすることができる一般家庭でも飲食できる茶の研究開発を目指している。

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今後の目標について

編集部:西尾様の研究における最終的な目標を教えてください。

西尾様:研究では,特許並びに論文化とトクホ・機能性表示食品に十分耐え得る研究を目指している。特にカテキン類は,既に骨粗鬆症においては実験動物レベルで解明が進んでおり,私達のカテキン類とビタミンKの多い抗ロコモ緑茶の市場での販売パートナーを現在模索中である。それを支える論文を作成しており,科学的に証明された開発研究を目指している。

また,カテキン類に限らず広範な栄養成分が作用して促進もしくは減少作用に着眼し,他の食品における成分解析と動物モデルでの高血糖や血小板凝集抑制等も並行して行なっている。つまり,食品を摂取しての栄養とは違った意義を解析中であり,これらの知見も公となる日が近いことをお知らせしておきます。

編集部:今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?

西尾様:トクホや機能性表示食品に合致しており実用できる食品を科学的根拠を加えて行くことに焦点を当てて研究を行う方針である。また,抗ロコモ緑茶は,カフェインの副作用を考えており,カフェインレス抗ロコモ緑茶も開発研究を現在行なっている。
加えて,緑茶に限らず食品中に存在するポリフェノールにはカテキン類以外にも数多く存在しており,その同定と生理機能の解析が必須と考えており,その解析に研究か舵を変化させていることをお伝えしておきます。

 

 

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