じつは読書には、認知症を予防したり、死亡率を下げたりする効果が知られています。
読書のどのような点が、認知症の予防や長生きにつながるのでしょうか?
本記事では認知症と読書について、以下の点を中心にご紹介します。
- 読書は脳を活性化させるのか
- 読書するとストレスに強くなるのか
- 読書は死亡率を下げるのか
- 認知症の方におすすめの本の種類とは
認知症と読書について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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認知力と読書の関係
認知力とは、理解・判断・論理に関する知的機能を指します。
より分かりやすくいえば、
- 記憶力・理解力・集中力
- 判断力・想像力・推理力・言語能力
などが認知力と呼ばれます。
一般的に認知力は年齢とともに低下していきます。
認知力が著しく低下し、日常生活に支障をきたした状態が、いわゆる「認知症」です。
加齢によって認知機能が低下するのはごく自然なことですが、工夫次第によっては認知機能の低下を食い止めることも可能です。
認知機能を鍛える方法の1つが読書です。
実際に、読書を習慣にしている方は認知症になりにくいという傾向がみられます。
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認知症の方が読書をするメリット
認知症の方の読書のメリットは、
- 脳が活性化される
- 集中力と記憶力を高める
- ストレスに強くうつ病になりにくい
- 長生きにつながる
などです。
脳が活性化される
読書は想像力を必要とする行為です。
そのため、テレビや音楽鑑賞よりも、脳を活性化させる効果が高いと指摘されています。
読書は、まず活字を目でみて内容を理解しなければなりません。
たとえば、小説であれば活字を追いながら、場面の情景や登場人物の心理を想像する行為を同時進行で行います。
つまり、脳の広い範囲を同時に使用するため、脳全体が活性化しやすくなります。
また、脳のさまざまな領域が同時に活性化することで、各領域をつなぐ神経回路が新しく誕生しやすくなるのも、読書のメリットです。
脳の神経回路が増えるほど、情報の処理能力は向上します。
つまり、認知力が向上・改善するため、認知機能の低下すなわち認知症の予防・改善が期待できます。
集中力と記憶力を高める
読書は脳を活性化させることで、集中力や記憶力を高める効果もあります。
読書では、文字を読んで理解するという「読解力」を必要とします。
文章を読んで想像力を働かせ、自分なりに解釈するには、脳のさまざまな領域を使わなければなりません。
たとえば、文章を読むという視覚情報を処理するのは後頭葉です。
あるいは、創造性を司る前頭前野の活性化も期待できます。
また、登場人物の心理を理解したり共感したりするのは、感情にかかわる前頭葉の領域です。
脳機能全体が活性化しやすくなるため、脳機能の1つである記憶力や集中力も高まりやすくなります。
ストレスに強くうつ病になりにくい
読書には実は、ストレスを解消させる効果もあります。
理由は物語・登場人物に感情移入することで、感情の昇華が期待できるためです。
読書では、物語や登場人物が読み手側の気持ちを代弁してくれます。
うまく言葉にできないような不安や、モヤモヤした気持ちを吐き出すキッカケになるため、読み手のストレス発散が期待できるわけです。
ちなみに物語の登場人物などに心情を重ねて、自身のストレスを発散させることは「カタルシス」「昇華」などと呼ばれます。
また、読書によってさまざまな人間心理を知ることで、他者に寛容な心を持ちやすくなる点も、ストレスの軽減に一役買っています。
なお、ストレスはうつ病を誘発する要因です。
読書によってストレスに強くなると、ひいてはうつ病の予防・改善にもつながります。
うつ病は認知症を誘発・悪化させることも多い疾患です。
読書を習慣化させることで、うつ病による認知症の発症・悪化の予防が期待できます。
長生きにつながる
一説では、読書の習慣がある人は、読書しない人に比べて死亡率が低いとされています。
読書と長生きの明確な因果関係は明らかにされていません。
しかし読書による脳の活性化が、死亡リスクを下げている可能性があります。
つまり読書によって認知機能を保つ=認知症を予防することは、長生きも期待できるわけです。
なお、死亡率を下げる読書は書籍を対象としており、新聞や雑誌は対象に含まれません。
また、新聞より小説・ノンフィクションのほうが長生き効果が高いとも指摘されています。
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認知症の方におすすめの本の種類
認知症の方の読書におすすめの本の種類を紹介します。
脳トレーニング本
いわゆる「脳トレ」用の本は認知症予防に役立ちます。
たとえばクイズや簡単な計算ドリル、漢字、クロスワードなどが代表的な脳トレ本です。
クイズ・計算・クロスワードなどは、問題を解く際に頭を使わなければなりません。
つまり脳をフル回転させるため、認知機能の向上ひいては認知症の予防効果があります。
最近は、認知症予防向けの脳トレ本も数多く販売されています。
難易度もさまざまですので、自分に合った種類・レベルの本を探してみましょう。
もちろん、認知症予防以外の脳トレ本でも認知症の予防は期待できます。
興味がある(読みたい)と思える本
認知症予防のための読書では、自分が読みたいと思う本を読むことが大切です。
面白いと思える本を読むことは、気持ちをリラックスさせ、より没頭して読み進められるためです。
反対に読みたくない本を無理に読み進めるのは、ストレスのたまる行為です。
ちなみにストレスは認知症を進行させる原因です。
認知症予防のための読書が、認知症のリスクを高めては本末転倒です。
「買った以上は読まなくてはいけない」という固定観念は捨て、自分が興味をもって読める本から読み進めていきましょう。
読みたいと思える本がないときは、インターネットや書店でおすすめされている本を選んでみるのも1つの方法です。
普段本を読みなれていない方は、あまり堅苦しくない本から読書を始めてみましょう。
たとえばエッセイや趣味に関する本などがおすすめです。
塗り絵
女性を中心に人気があるのが塗り絵です。
厳密には読書ではありませんが、認知症の予防としてはおすすめです。
塗り絵は、1枚塗るだけでもさまざまなことを考えなければなりません。
たとえば塗り始めるときには、まず視覚を通して全体像を把握します。
把握した全体像を元に、
- 何色の色鉛筆を使うのか
- 配色をどうするか
- どこから塗り始めるか
などたくさんのことを考えていきます。
考えるべきことが多ければ、その分使用される脳の範囲も広くなります。
脳全体の活性化が期待できるため、認知機能の向上が期待できます。
さらに、塗り絵は脳だけでなく手先も使います。
手先の運動もまた、認知症の高い予防効果があります。
つまり塗り絵は、脳・手先を同時に使用することで、認知症予防に高い効果を発揮します。
最近は大人向けの塗り絵が多数発売されているため、自分の好みに合うものを探してみましょう。
認知症は読書で予防
読書で認知症を予防したいなら、まずは読書を習慣づけることが大切です。
習慣づけるには、できれば読書をする時間を決め、毎日の生活のスケジュールに組み込むのがおすすめです。
たとえば夜寝る前や朝の10分間など、リラックスして読書できる時間を作りましょう。
あるいは、「1日10ページ」のように小さな目標を立てるのも読書を習慣づける良い方法です。
読書には認知症予防以外にも、さまざまな健康効果が期待できます。
ぜひ毎日本を開くことを習慣づけてみましょう。
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読書以外での認知症予防とは?
読書以外の認知症予防法を紹介します。
適度な運動
身体を動かすと全身・脳の血流が良くなるため、脳機能が活性化しやすくなります。
とくに運動しながら考え事をすると、脳のより広い範囲を使うため、更なる活性化が期待できます。
スポーツが苦手な方は、散歩・ウォーキングを試しましょう。
身体を動かすだけでなく、景色などを楽しむことも、脳への程よい刺激になります。
十分な食事と睡眠
バランスの良い食事と質の良い睡眠をとることも大切です。
栄養不良や疲労がたまっている状態では、脳が正常に機能しにくくなるためです。
食事は、
- 低脂質
- 低糖質
- 低塩分
を心がけ、色々な食品をバランスよく摂ると認知症予防が期待できます。
睡眠はなるべくリズムを崩さないことが大切です。
毎日の就寝・起床時刻を決め、規則正しい生活を心がけましょう。
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読書バリアフリー法とは?
読書バリアフリー法とは、すべての国民が平等に読書できることを目的にした法律です。
正式名称は「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」といい、2019年6月に成立しました。
読書バリアフリー法は、視覚障害者や発達障害者など、さまざまな障害を抱える方を対象にしています。
障害の種類に限らず、すべての方が本・文字に触れやすい環境の整備を目指すのが、読書バリアフリー法の狙いです。
具体的なサービスには、文字の大きな本や点字本の充実のほか、図書館での朗読サービスや貸出・郵送サービスの整備などがあります。
認知症の方や目が見えにくい高齢者でも読書しやすい環境が整うため、読書を習慣づけるのに役立ちます。
出典:「読書バリアフリー法について」
認知症と読書のまとめ
ここまで認知症と読書についてお伝えしてきました。
認知症と読書の要点を以下にまとめます。
- 読書は創造力・読解力を必要とするため、脳全体の活性化が期待できる
- 読書によって物語・登場人物に感情移入することで、ストレス発散やうつ病リスクの低減などが期待できる
- 読書習慣のある方は死亡率が低いと指摘されている
- 認知症の方におすすめの本は、脳トレ本や塗り絵のほか、自分が面白いと思える本
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。